「あのな、俺、
この何日か、
サンジのことばっか、いっぱいいっぱい考えてた。」
だってよ、料理作るのは一番上手い訳だし、
美味いものが判るから、
その分、下手っぴなの食うのは 俺らよりキツイ話なんだろし。
分け前の小遣いは限られてて、
サンジが着てそうなしゅっとした服とか、
ネクタイに飾るヘアピンみたいのとか、
たばこに使うライタとか、
俺にはよく判んないし、きっと高いんだろうし。
陽に当てると勝手に膨らんで、
天井までふわふわ飛んでくブタ風船のモビールとか、
やっぱ暖まると羽根飾りがひゅんひゅんっと跳ねて、
それへ目がけて猫が飛びつくってゆう玩具とか、
そういう面白いもんも、
サンジってば大人だからあんまり興味なさそだし。
花は嫌いじゃないってゆってたけど、
むしろ女の人に渡して喜ばれるのが好きなんだぞ、ああいう奴はって
ウソップがゆってたから、
サンジ本人に喜ばれるのは一瞬だけってのが、何か…何かだし。
「そいで、チョッパーにも手伝ってもらって、
何がいいかなって一緒に考えてサ。
そいでそいで、やっととーたつしたのを、
二人で今朝から釣って来たんだ♪」
満面の笑みを顔中に塗りたくり、さあどうだと
我らが船長が、小さなトナカイドクターと二人して、
左右の蔓を手に掲げて見せたのは。
ちょっとした長持ちくらいありそうな籠、いやビクだろか、
それへと押し込められているのがさすがに窮屈か、
時々大きなオビレをぶんと振っては暴れかかる、
「お前ら、これ…。」
オオイジハルホオバルメバルという回遊魚。
春先に産卵する関係か、その時だけ身が柔らかくなって絶品だが、
それ以外はウロコがちょっとした武装並に堅くなって、
どんな名人の包丁さえ通らないという珍魚だそうで。
しかもモノによっては2mもの大物に育つので、
漁船が体当たりされて沈んだ話もざらに聞くとか。
「あのなあのな、もうすぐ見えてくる島から来てたらしいカモメがな。
美味しいかどうかは知らないけれど、
珍しい魚だったら丁度この海流にくるぞって教えてくれてな。」
提げているというより手を掛けているだけらしい、
小さなトナカイさんが空いてる手をぶんぶんと振って説明を足して。
「こんな大きいのに育ってんのは、凄い珍しいって。
…なあおい、聞いてるか、サンジ。」
そうかだから、今日は何でか早起きして、
船尾でギャアギャアとにぎやかしていたチミっ子二人だったのかと。
だって言うのが聞こえたけれど、
ウソップやフランキーやブルックが、
水だコーラだ牛乳だ、
ええい薄いぞヌルいぞ、俺の舌がまだ判らんらしいな…なんて、
よく判らないことで突っ掛かってくるわ。
ナミさんやロビンちゃんが、
※◎ソースてどういうの? ▲#の実って、いつが旬かしらなどなど、
よくよく考えたら自分で調べられることだろうに、
甘いお声で聞いてくるわ。
あんのクソ剣士に至っては、
皿やカップのありったけを木箱や樽へ詰め込んで、
大した足しにもなりゃしないだろうに、
鍛練の重しがわりにしてやがったり。
何でまたどいつもこいつもと思っていたらば、
大物が上がるまで、釣りを覗きに行かせないためだったらしくって。
「なあなあ、これだったら腕が鳴るか? サンジ?」
「おうよ。」
結構な格闘をしたものか、
何なら水に飛び込んでの直接という捕まえ方はできない能力者二人、
ウロコや海草のクズまみれになったまま、
そりゃあ楽しそうに にっかと笑うもんだから、
「つか、結局は
お前らが美味いもん食いたいだけなんじゃねぇのか?」
そんな憎まれがついつい飛び出していた、
我らが名コックさんだったのでありました。
HAPPY BAIRTHDAY! TO SANJI!!
◇ おまけ ◇
「女の人が一杯載ってる本とかは、
そうそう見てるようじゃないから、やっぱ要らないんだろうし。」
「……っ☆」
何でそういう方向の選択肢が出て来たんだと、
ちょっぴりあたふたし掛かったシェフ殿だったが、
悩めるルフィが手に取ったのは、
女性向けのファッション雑誌だったそうです。(笑)
〜Fine〜 13.03.02.
*今年こそは間に合ったぞの、サンジさんBDおめでとう噺でした。
とはいえ、
別のお部屋で連載書いてる途中ですんで、なんか手短ですいません。
ちなみにというか、余計なお世話の解説をつけますと、
ウチのサンジさんは、こっそりルフィさんも大のお気に入りなので、
のっけのフレーズだけで 結構 胸がドキドキしていて、
十分 お祝いになってたりもするのであった。(苦笑)
めーるふぉーむvv


|